近年の進路状況の傾向
2023年度(令和5年度)の公立中学校卒業生のうち、高等学校などへの進学者は76,644人、進学率は98.3%で依然高い水準で推移しています。都内公立高校全日制への進学率は前年度より0.3ポイント減の50.7%で、都立離れの現状は昨年同様です。私立高全日制進学率は30.8%で前年度から0.8ポイント減、全日制全体としては85.9%で前年度から1.1ポイント減となりました。その一方、通信制志向は強まっており、前年度から0.8ポイント増の6.9%、進学者計は年によって増減がありますが、それにもかかわらず通信制については実数・割合ともに年々増加しています。全国的に見ても、通信制高校の開校、既存の私立高における通信制課程の新設。既存の通信制高校における通学キャンパスの新設等、通信制高校をめぐる動きは依然活発です。校長会志望予定調査
2024(令和6)年12月12日時点での校長会志望予定調査によると、全日制高校への志望率は年々下がり続けており、88.02%(前年度88.39%)となりました。特に、都立高校の志望者は58.72%で前年度(63.29%)よりも大きく下がっています。一方、私立・国立高校への志望率は近年上昇傾向でしたが、今回も28.96%で前年度(24.64%)から大幅なアップとなりました。また、定時制・通信制の志望率は5.2%(前年度4.93%)で0.27ポイントアップで、志望者は増え続けています。「都立から私立へ」も含め「全日制から通信制へ」と流れていることがわかります。
全日制の都立高校志望倍率は1.15倍となり前年度(1.24倍)から大きく下がりました。近年は1.22倍~1.25倍で行き来していましたが、ついに1.1倍台になってしまいました。前年度から男女合同の選抜となった普通科は1.22倍で、こちらも近年の1.3倍台を維持できませんでした。
都立高校の中で志望倍率が上がったのは、農業科や工業科などです。工業科では、ものづくり技能、デジタルスキル・グローバルスキルの習得支援、大学などの進学支援等を充実させる学校づくりを進めています。商業科は3年連続の倍率アップとなっていましたが、今年度は微減となりました。チャレンジスクールは今年度「立川緑」が新設され、多くの志願者を集めました。都内公立中学校では長期欠席者が14,479人→20,432人→20,986人→22,506人と年々増え続けており、不登校等によって能力や適性を生かす機会に恵まれなかった生徒を受け入れるチャレンジスクールの需要が増してきている様子がうかがえます。
都立推薦試験
①出願傾向特別推薦を含む推薦入試の倍率は2.28倍で、過去30年間の中で最も低い倍率となりました。集団討論が実施されなくなった2021年度には倍率が上がったものの、それ以外の年度では倍率ダウンが続いています。都立高校第一志望者のうち推薦入試に応募する出願率は47.5%で、前年度よりも0.4%の減です。
②高倍率になった高校
普通科でもっとも高い倍率になったのは、青山で4.25倍でした。次いで三田4.08倍、駒場4.07倍、南葛飾4.07倍、豊島4.00倍と続いています。三田と豊島は前年度も上位5校にありました。単位制普通科は新宿が5.31倍でトップ、大泉桜の4.50倍が続きました。この2校は前年度と同じ顔ぶれです。新宿は75人減ですが、それでも5倍以上の高倍率です。総合学科では、杉並総合3.17倍、晴海総合2.88倍と続きました。前年度と同じ上位2校でしたが、順位が入れ替わりました。
専門学科では、工芸「デザイン」5.10倍でトップ、次いで総合芸術「美術」が5.08倍、駒場「体育」5.00倍、瑞穂農芸「畜産科学」3.90倍、工芸「グラフィックアーツ」3.80倍、園芸「動物」3.60倍と続きました。定員が少ないため、年によって入れ替わりが目立つ専門学科ですが、総合芸術の美術、工芸のデザインなどは前年度も上位に入っていました。
③推薦合格者の状況
全日制の推薦合格率は43.2%となって前年度(39.7%)と比べ3.5%上がりました。
普通科は38.3%(前年度34.8%)となりました。単位制普通科37.6%(同33.8%)、コース制52.5%(同37.9%)と、こちらも合格率は上がっています。応募倍率が2倍を超えていた農業科は48.5%(同54.3%)という結果でした。
2年目の実施となった科学技術「創造理数」の理数等特別推薦は、募集人員8人に対し、5人が応募し、合格者は3人となり、合格者数が定員に達しませんでした。実施4年目の立川「創造理数」でも同様の現象が起きています。これらは一般推薦とは異なり、定員を満たしていなくとも不合格になる可能性があるからです。
※都立高校一般入試や私立高校の概況については次号に続きます。